実際の障害年金申請事例4ーその他の障害-審査請求



実際の障害年金申請事例4ーその他の障害-審査請求


「私と契約して下さい!!」というメールから始まったこの事例の依頼者様の傷病は、指定難病にも分類されているある傷病であり、腫瘍や外傷を主な原因として、脳のある器官に障害を引き起こすというものです。

 弊所にメールする数か月前、この依頼者様は傷病を抱える体に鞭打って、かなりの時間を費やしながらご自身で裁定請求(遡及請求)をおこないました。依頼者様のお身体の状態を鑑みればかなりのご苦労をされた事が推し量れます。ある社労士事務所様に病歴・就労状況等申立書の作成を代行していただき、更に別の社労士事務所様に診断書についてのアドバイス等の支援を受け、何度も主治医と相談し、自分なりに「万全の態勢」をもって裁定請求に臨んだものの、結果は「障害認定日・請求日共に障害等級に該当せず不支給」という無情なものでした。

 依頼者様の障害は人生を通して付き合わなければならない可能性が高く、一般の就労が困難になった依頼者様は障害年金の受給に今後の人生を賭けている部分もあり、それ故不支給処分による落胆も甚大なものがありました。「これからの人生を思うともう立ち直れないかもしれない」と思うほどのショックを受けていたそうです。その後、前述の社労士事務所様に不服申立(審査請求)代理のお願いをしたものの受任していただけず、藁にも縋る気持ちで弊所へご連絡下さったという経緯でした。



障害年金の審査請求とは

障害年金の審査請求とは


 障害年金の請求において、日本年金機構(以下:保険者)の処分に不服がある場合、「処分の決定があった事を知った日の翌日」から起算して3か月以内(以前は60日でしたが、行政不服審査法の改正に伴い変更されました)であれば、地方厚生局に設置されている社会保険審査官に対し不服を申し立てる事ができます。これを審査請求と言い、第一審にあたります。

 また、審査請求による社会保険審査官の決定に不服がある場合は、「審査請求の決定書の謄本が送付された日の翌日」から起算して2か月以内であれば厚生労働省内に設置されている社会保険審査会に対して更に不服を申し立てる事が可能であり、これを再審査請求と言い、第二審にあたります。参考に、再審査請求(第二審)における近年の容認(請求人の勝ち)率を以下に記載いたします。

【年度別容認率(被用者保険及び国民年金)】
年度実質容認率(容認+原処分変更)
平成25年度14.7%
平成26年度22.5%
平成27年度22.5%

 再審査請求(第二審)は裁判外の最後の砦にあたり、審査請求(第一審)に比べると容認率は高い傾向があります(審査機関が異なる為)。ですから審査請求段階での容認率は更にぐっと低くなっている事が予想されます。不服申立てをおこなうのであれば、容認率の高い再審査請求まで戦うべきですが、いずれにせよ一度決定されたものを覆すのはそれほど簡単では無いという事は言えるでしょう。



審査請求では何をすればいいの?

 お電話でのご相談でよく、「審査請求では何を添付すればよいのか?」というご質問を受
けるのですが、私はこの部分に関して特定の答えは見つけられません。審査請求でやるべき事は、「保険者の処分が相当では無い事」そして、「自身の望む処分が相当である事」を可能な限り証明して見せる事だと思っています。ですから、その都度処分の内容と事実関係を精査して、こちらの主張を証明する方法を一から考える事になります。主張を立証するには何が必要となるか考えて収集していく訳です。勿論、過去の裁決(再審査請求の結果)で当該案件と似たものがあれば引用も考えます。

 また、「とりあえず審査請求をしてみたけど、この内容で覆ると思うか?」というご質問も頂きますが、保険者の処分が明らかに相当のものである場合はそもそも不服を申し立てる部分が見つからない訳で、根拠のないまま無理に審査請求をおこなっても請求は当然の様に棄却されてしまう可能性が高くなります。「不満を述べる場」ではなく「保険者の処分の不当を訴えて、その根拠を示す場」であるという事を踏まえて不服を申し立てるかどうか検討する必要があるかと存じます。

 お話が逸れましたが、今回の依頼者様から不支給となった請求の詳しい内容と数年間の病状や勤務状況をおうかがいし、年金機構に不支給の理由を照会します。診断書や申立書等の提出書類一式をじっくり確認させて頂いたところ、私には保険者の不支給の理由が相当とは言えない(つまり、不服を申し立てる余地がある)と感じましたので、微力ながらご依頼をお受けする事にいたしました。



今回の審査請求のポイント①  【主要な自覚症状が「倦怠感」】

 今回の依頼者様の傷病における主要な自覚症状は「倦怠感」です。実は倦怠感や痛みという症状はご本人にしかわからない(医師もわかりかねます)という性質上、これらを主訴とする傷病は障害認定が難しい傾向があると思います。客観的に見て、「障害の程度が軽く見え易い」という事であり、私が見た限り今回の不支給処分においても実態より日常生活等の支障の程度が軽く見られている様に感じました。つまり、様々な角度からアプローチをして、障害の程度が認定基準を満たしている事を合理的に説明する必要がある訳で、処分を覆すのは容易では無いと考えられます。しかし、実際に依頼者様は日常や就労に多大な支障をきたしている以上、最善を尽くさねばなりません。



今回の審査請求のポイント② 【検査結果や資料等材料は多い】

 実はご依頼者様はとても実直な方で、数年前に発症してから現在までのほとんど全ての検査結果や診断書、お仕事関係の書類等を大事に保管されておりました。私にとっては非常にありがたい事で、それらを全てお借りして内容を詳しく確認していきます。そしてこの中から私の主張を証明する材料をピックアップし論理を構成していきます。

今回の審査請求のポイント③ 【主治医が次々と代わってきた】

 実はこの依頼者様の主治医は傷病発生時から現在まで十数回変更されており(病院は同じです)のべ10人程おられます。それぞれ短期間で交代している為、当然診断書作成医は障害認定日当時をご自身の目で確認した事は無く、カルテに記載されている内容を転記してくださった様です。そのような背景も影響してか、診断書の記述に「明らかに事実とは異なる部分」が複数見受けられました。



今回の審査請求の内容

 難病故か過去の裁決例では当該傷病を扱ったものは少ない印象を受けました。その少ない裁決の内容からも障害認定の難しさを感じましたが、請求期限は刻々と迫っておりますので手をこまねいてはいられません。

 まず、診断書の記述が明らかに誤っている箇所につき主治医にご訂正いただきました。勿論、誤っている事を証明する資料をお見せした上でお願いしておりますので即座にご訂正下さりました。先生がおっしゃるには、認定日当時の依頼者様を知らないが為、把握していない事柄が多かったそうです。そしてその旨を記載した理由書をご作成下さいました。

 また、過去の全ての検査結果の中である数値の変動に着目したところ、保険者の不支給の理由の1つと矛盾する内容である事がわかりましたのでわかり易いように図表化し、反証をおこないます。加えて、旧診断書が反映していなかった依頼者様の数年間の就労状況の詳細(労務不能期間も存在したのですが、診断書には反映されておりませんでした)を、事実を証明する資料(現在の就労状況の詳細についての事業主様のご説明書類や色々)と共にこれもまた図表化。保険者の別の不支給理由に対しても反証をおこなっていきます。

 一方では、認定基準に照らし、依頼者様の障害の程度が障害等級に該当しているという主張を様々な角度からおこない、勿論それと共に当該主張を証明する資料をそれぞれ添付いたします。当時はまだ審査請求期間は60日だったのですが、期限いっぱいを利用して現時点で可能な準備をおこなっていきます。依頼者様とは数えきれないほどお電話でのヒアリングやデータのやり取りを行い、病院へも同行いたしました。毎日の投薬を欠けば最低限の体調の維持も極めて難しいお身体であるにも関わらず、様々なご協力をして下さり、まさに依頼者様と二人三脚の準備期間だったと言えるでしょう。

 最終的に、「審査請求の趣旨と理由」が約30ページ、「添付資料」が約15種類かつ約80枚に及ぶ内容となりました。請求期限にも無事間に合い、直接社会保険審査官に請求いたします。請求は基本的に郵送で問題無いのですが、私はいつも可能であれば直接お渡しする様にしております。雑談がてら資料の説明や、本請求の概要及び問題点についてお話できますし、私の人となりを知って頂く事も重要であると思っているからです(勿論、受理した方が担当審査官になるとは限りませんが)。



審査請求の期限に間に合わない時は?

 不服申立ての準備には時間を要します。ですから、時間がとにかく足りないという事も当然ある訳です。そのような時には「期限内にひとまず請求をする」事をお勧めします。例えば、審査請求書の「趣旨と理由」欄に概要及び「詳細は別紙」等と記入し、審査官に遅れて理由の詳細や資料を別紙として提出する旨をお伝えします。すると審査官は請求を受理しつつ、審査を開始せずに追加提出があるまで待ってくださるのです。「何日まで」と仮の期限を切られる事もございますが、きちんと理由を話せば融通は利かせてくれます。ただし、長くても1か月以内くらいに留めるべきでしょう。甘えて迷惑をかける事に利点は無いはずですので、どうしても請求期限に間に合わない場合の最後の手段という認識であるべきです。



今回の審査請求の結果

 社会保険審査官に対し審査請求をおこなってから2か月弱、担当審査官から私に「保険者が処分変更を決めた」と電話がありました。この「処分変更」については以下に説明いたします。

 まず、審査の流れは簡単に言うと以下の様になっています。

①審査官が審査請求を受理する

②審査官が請求人の提出した物件の一切の写しを保険者に送付する

③保険者が請求人の主張を吟味し、それに対する反論や処分の根拠等を「意見書」という形で審査官へ送付する

④審査官が両者の主張や資料を踏まえて審査の上、「決定(却下・棄却・容認)」を下す

「処分変更」というのは、上記③の段階で保険者(ここでは日本年金機構)が、「自ら下した処分を見直し変更する」という事を意味します。わかり易いイメージとしては、「処分の誤りを認めて変更し、争いから降りる」という感じでしょうか。そして処分変更の内容に納得がいく場合、請求人は審査請求を取り下げる運びとなります。

 請求人の主張を全て受け入れた形での処分変更は最も望ましい結果となります。何故なら、通常審査請求をおこなってから決定が下りるまでには大体4~5か月くらいかかりますが(当然もっと長い時間がかかるものもあります)、処分変更が発動すると審査官の審査前に決着しますので、結果が出るまでのスピードが速い事が多いという訳です(本事例でも、処分変更の通知が届くまで2か月程でした)。

 後日保険者から依頼者様へ通知が届きました。変更された処分は「障害認定日及び請求日双方において3級の障害等級に該当すると認め、障害厚生年金3級を支給する」という内容のものでした。双方で3級と認められた為、約3年遡って年金の受給権を得る結果となります。そしてこの時点で審査請求を継続する利益が無くなった為、審査請求は取り下げる事になります。正直、本事例は再審査請求までもつれる事を覚悟しておりました(再審査請求まで進むとトータル1年以上の期間を要する可能性が高いです)ので、保険者から処分変更を引き出せたのは予想外かつ会心の結末でした。

 傷病によって日常生活能力及び労働能力が低下しており、十分な収入を得る事ができない依頼者様にとって年金の遡及は心強い援軍となるはずです。傷病を抱えながらも私を信じて積極的な情報提供をして下さった依頼者様は勿論の事、主治医様、事業主様、社会保険審査官、本請求に関わってくださった皆様に心より感謝申し上げる次第でございます。

 実は依頼者様とご契約を交わしたその日は偶然にも依頼者様のお誕生日でした。絶望感を滲ませ、「誕生日なのに・・・」と悲しそうなお顔をされていたのを思い出します。少々遅くなりましたが良い誕生日プレゼントになったでしょうか。これからも傷病との長い闘いが続くであろう依頼者様の人生。年金受給権獲得が、これからの人生を微かに照らす光明となってくれたら、お手伝いさせて頂いた者としてこれほど嬉しい事はありません。












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