実際の障害年金申請事例-(再)審査請求ー腎臓








 この事例の依頼者様は腎臓疾患によって人工透析を施行してらっしゃる方です。障害年金の請求事例としては比較的スタンダードなものですが、人工透析による障害年金請求は「初診日証明が難航する可能性がある」という点が特徴の1つと言えるでしょう。

 弊所に不服申し立てのご依頼をされる前、依頼者様(女性)はご自身で裁定請求(事後重症請求)をおこないました。年金事務所に何度も足を運び、アドバイスに従って準備をおこなったそうです。実はこの依頼者様の初診日は昭和60年であり、当時の病院は既に閉院、その後いくつもの病院にかかっておりますが、現存する最も古いカルテで平成13年頃のものという状況でした。加えて、依頼者様本人も初診日が昭和60年2月である事は覚えているものの、何日かまでは覚えておりませんでした。遠い過去の事ですから無理もないでしょう。

 年金事務所で「日付がわからなくても便宜上日付を記入するように」との指示をうけ、初診日を昭和60年2月1日として障害厚生年金を請求、結果は「初診日不明による却下」というものでした。



「受診状況等証明書が添付できない申立書」だけでは原則初診日は認定されない


 初診日の医療機関の閉院やカルテ破棄により「受診状況等証明書」が作成できない場合に、「受診状況等証明書が添付できない申立書」を提出する事になりますが、それに加えて初診日を客観的に確認できる資料等がなければ原則初診日は認定されないという事には注意が必要です。初診日の確定は障害年金請求においてもっとも重要と言っても過言では無く、それ故に初診日を証明する事ができずに涙を飲む方は後を絶ちません。今回の依頼者様もまさにこのケースと言えます。

 ちなみに、今回の依頼者様のように初診日が昭和61年3月以前である場合、支給要件について「旧法」が適用される事にも注意が必要です。旧法についてご説明すると長くなってしまう為別の機会に委ね、ここでは割愛いたします。なお、ご存知の方の為に、本事例では「発病日=初診日」として申し立てたという事と、未加入期間も存在していたという事だけ触れておきます。



「第三者証明」が軸


 依頼者様から不服申立代理人のご依頼を受け、早速審査請求の準備を始めます。丁寧にヒアリングをおこないましたが、初診日を証明する手掛かりになるものはほぼ皆無で非常に苦しい予感から始まりました。医療機関の廃院、カルテも無し、その他医証もない中で「第三者証明」を軸とした構成が見えてきますが、20歳以降に初診日がある場合、原則第三者証明のみでは初診日は認定されません。ですから、どんな小さなものでも初診日を推認できる資料となるものが欲しいところでしたが見つからない中で、若干の光明が見えます。



医療従事者の第三者証明


 依頼者様が主張する初診日は=「入院した日」で(症状を発症後すぐ病院へ連れていかれ即入院)、入院期間は約10日間でした。実は、その時に依頼者様を担当していた看護師さんを見つけ出す事ができたとの事でした(ご本人とご家族が苦労して見つけ出しました。約20年ぶりの再会で、現在も看護師をされていました)。

 平成27年10月以降、初診日認定についての取扱いが若干変わったのですが、その中に「第三者が初診日頃の受診状況を直接把握できる立場の医療従事者であった場合は、当該第三者証明のみで初診日を認めることができる」という取扱いがあります。つまり、他に初診日を推認できる資料が無くとも、第三者証明のみで初診日を認定してもらえる可能性がある訳です。当然、今回の審査請求はこの部分を突破口とする事に決めました。

 ただし注意が必要なのは、あくまでも「~認めることができる」であり、「認めなくてもよい」と解釈できる訳です。つまり、「職権を発動することができるだけで、応答する義務がある訳では無い」ということであり、医療従事者の第三者証明の内容やその信憑性が問われる訳で、楽観視ができる状況では全くありません。この依頼者様の場合、初診日が約30年も前なのですから尚更です。



依頼者様と看護師さんの関係


 依頼者様は当該病院に10日程入院した時、ご自身の担当だった年齢の近い前述の看護師さんと親しくなり、退院後はその病院では治療を受けておりませんがお父様(後述)の送り迎えで病院には通っており、看護師さんとはその都度おしゃべりし、プライベートでも一緒に出かけるようになったそうです。そしてその年の暮れにある理由で疎遠になり、その後一度だけ(今から20年程前)お会いしたのを最後に現在まで関係が途絶えておりました(現在どこに住んでいるかもわからなかった為、探すのは本当に大変だったそうです)。

 実は依頼者様のお父様も透析患者で当時依頼者様の入院した病院で透析を受けており、発症した依頼者様をこの病院に連れて行ったのもお父様なのです(当然看護師さんとも顔馴染みでした)。そして、お父様は依頼者様が入院した年の暮れにお亡くなりになっており(病院との間に遺恨が残るかたちで)、お父様の死をきっかけに看護師さんとも疎遠になってしまったのでした。



今回の審査請求のポイント①【医療従事者の第三者証明で初診日認定を目指す】


 前述した平成27年10月からの初診日の取扱いの変更点である「医療従事者の第三者証明のみによる初診日認定」を基本線として請求をおこないます。ただし、この部分のみに縋るのは下策であり危険です。



今回の審査請求のポイント②【当時の同僚の第三者証明等で補強】


 実はお父様とご依頼者様は当時同じ会社につとめており、当時の同僚は依頼者様の病気の事はもとよりお父様の事もよく知っています(お父様の同僚でもあるからです)。当然お父様が透析を受けていた事やお亡くなりになった事も知っている訳です。このような当時の同僚お二方に第三者証明をお願いし、看護師さんの証明を補強します。もちろん、依頼者様及びお父様と同僚のお二方が当時同じ職場で働いていて、依頼者様の入院を当然知るべき立場であった事は可能な限り立証します。



今回の審査請求のポイント③【お父様の逝去が記憶の重要な目印】


 お父様を良く知っている同僚さんを選んだのには訳があります。依頼者様は入院した年の暮れにお父様がお亡くなりになったとお話しておりました。お父様がお亡くなりになった日は戸籍等で証明ができます。もし、同僚が依頼者様の入院年月日を正確に覚えていなかったとしても、「お父様がお亡くなりになった日を基準としていつ頃か」であればある程度特定ができるかもしれないと思ったのと、少なからず記憶の目印そして目安にはなっているのではないかと思ったからです(これは看護師さんにも同様の事が言えます)。



今回の審査請求のポイント④【「覚えているのが必然」を裏付ける】


 ありがたいことに看護師さんは初診日当時の事を覚えてくださっておりました。しかし、30年も昔の出来事です。しかも、たった10日間だけ入院した患者さんの事を証言する訳ですから、「覚えている方が不自然」と受け取られる可能性があります。ですから、看護師さんと依頼者様の関係性を紐解き「印象に強く残っているのが必然」である裏付けをおこないます。すなわち、「お父様も患者さんで共通の知り合いであった事」、「入院で知り合い、プライベートも共にする友人として1年程過ごした事」、「お父様の死という事件がきっかけで疎遠になってしまった事」等を裏付け資料を作成して説明していきます。



今回の障害年金審査請求の内容


 上記第三者証明が三つ、その他に、これは初診日について参考となる資料とは言えませんが、「お父様の初七日に亡きお父様宛てにご自身が書いた手紙(病院に対する抑えられない感情や苦悩などを綴ったもの)」を添付しました。これは家探し(初診日の手掛かり探し)の中で、お父様の葬儀の写真に挟まっていたもので、依頼者様も存在を忘れていたものでした。その中に「2月の入院の時に~」という文言と、手紙を書いた日の日付がある為、資料として添付しました。しかし、当時書いた事が証明できない(インクや用紙の鑑定等で証明する事は難しい様です)ので(つまり、作為があったのではないかと判断される可能性があります)、あくまで参考です。

 第三者証明は皆様想像より詳しい内容を書いてくださっておりましたが、入院した時期を完全に証言できる人はおりませんでした。ただし、皆様異口同音に「昭和60年の前半である事」を証言されておりました(看護師さんはお父様が無くなった年の初め頃と証言)。依頼者様申し立ての「昭和60年2月1日」と整合性は取れています。

 主に以上を材料に論理を構成し「審査請求の趣旨と理由」を作成、添付資料をまとめました。いつもの事ですが、かなりのボリュームになりました。



今回の審査請求の結果


 審査請求から4か月程経過した頃、弊所に社会保険審査官(以下:審査官)から決定書の謄本が届きました。決定書の内容は「請求棄却」。つまり敗北です。

 やはり、一筋縄では行きませんでした。「医療従事者の第三者証明が初診日を認定するに足るものであると立証できるか」が急所と判断し準備しましたが、日本年金機構(以下:保険者)及び審査官に認めてもらう事はできませんでした。「保険者の意見書(私の審査請求の主張を踏まえた保険者側の言い分。審査官に対して保険者が送付します)」には、「当時の担当看護師の申立書からは、請求人の申し立てを客観的に確認できない」「原処分(最初に依頼者様が却下された処分のこと)は妥当である」との強気の回答でした(つまり処分変更をする気はないという事で、結果的に審査官も保険者を支持して請求を棄却した訳です)。

 その後、審査官(請求を棄却した審査官)に預けていた書類の原本を受け取りに行った際に、審査官に「再審査請求はしますよね?」と聞かれました。「はい。お客様次第ですが、最後まで頑張るつもりです」とお返事したところ、「そう言うと思いましたので既に関係書類は社会保険審査会(以下:審査会)に送りました。会(審査会)の判断は私と同じとは限らないです。あなたはいつも理詰めで、そして結果的に勝っていますから」と、意外なエールをいただきました。立場は違えど、障害年金という制度の一角に真剣に携わっている者同士ですから、とても嬉しいあたたかいお言葉でした。



再審査請求の内容


 正直、審査請求で出し尽くした感はありました。しかし、公開審理も想定した追加の主張はしたいところです。

 そこでまず、オリジナルの第三者証明書式を作成し、再度担当看護師さんに証明をいただきました。本件審査で特に重要であると思われる箇所を重点的に質問する書式で、当該箇所を少しでも詳しく掘り下げる為のものです。

 加えて、厚生労働省年金局及び保険者が過去発行した文書を複数提示し、内容をピックアップしながら「初診日認定の取扱い方」や「制度趣旨」等の観点から当方の主張の妥当性と、保険者の処分が相当では無いことを徹底的に申し立てます。かくして、「もうこれ以上は打つ手がない」と思える内容で再審査請求をおこないました。

 再審査請求をおこなって約半年後、弊所に審査会から「公開審理」の日時決定と出欠の通知が届きました。「ついに来たか」という感じです。このタイミングで処分変更が無いのであれば、後は公開審理を経て審査会の裁決に全てが委ねられる事になります。当方の主張は基本的に審査請求と同じである事を加味すると、残念ながら処分変更の発動は薄そうだと感じておりました。



再審査請求の結果


 公開審理は東京の厚生労働省内でおこなわれます。ですから、私達地方の人間には出席するのに費用が伴います。ご依頼者様は私の代理人としての出席をご希望して下さったのですが、経済的には苦しい状況にあります。費用を可能な限り安くする為飛行機はLCCで最も安いものを即予約する作戦でいくことにし、日当のことなどは後から考える予定でいたのですが、何とか少しでも日当を工面しようとしてくださる依頼者様を見て正直涙が出そうでした(依頼者様が、負けを覚悟してなお、私に最後までわずかな望みを託して下さっているのを良く知っておりましたので)。と、同時に依頼者様の為にも負けたくないという気持ちが大変強くなりました。そんな中、飛行機の予約を入れようとしていた矢先(まさにその日の午前中)に厚生労働省年金局から一本の電話がありました。内容は、「保険者が処分変更を決定した」というものでした。

 最終的に保険者は当方の主張を全て認め、初診日も依頼者様申し立ての昭和60年2月1日で認定されることになり、依頼者様の裁定請求月の翌月から障害厚生年金2級が支給される運びとなりました。審査請求から当方の主張及び論理は基本的に変わっておりませんが、看護師さんの第三者証明が新書式によって更に奥行きのある内容になったことは奏功したかも知れません(それでも、初診日については「昭和60年1~3月のどこかである」までの特定が限界でしたが)。また、追加の主張は保険者の揚げ足をとるようなやや攻撃的な内容でしたが、当方の主張を精査して同意した審査会が保険者に処分変更を促した可能性は極めて高いでしょう。

 上記保険者の処分変更を受けて、予定されていた公開審理も中止となりました。同時に再審査請求は取り下げる運びとなります(申し立てる不服が無くなった為です)。ご依頼者様もこの逆転劇を本当にお喜びくださり、受任から処分変更まで1年以上を要した不服申立でしたが、何とか代理人社労士冥利に尽きる結果となりました。私を最後まで信じて下さった依頼者様、第三者証明にご協力くださった皆様、そして審査官及び審査会、本請求に関わって下さった方々に心より感謝申し上げます。そして、依頼者様の亡きお父様にも心より感謝申し上げなければなりません。第三者証明者様と依頼者様を全てお父様が繋いでおり、お父様のご逝去された日が初診日の貴重な目印となりました。お父様のご助力があったと思わずにはいられないのと共に、きっと今回の結果に満足してくださっているものと思っております。

 私が開業間もない頃、日本年金機構(社会保険庁時代も含め)で数十年の勤務歴のある先輩の社会保険労務士さんから、「障害年金業務を志すのであれば、大変だと思うが不服申立はなるべく受けてあげて欲しい。不服申立は自分にも未知の領域で入っていく事に躊躇がある。しかし助けが無ければ勝つのは難しい事を考えると社労士が助けるべきであり、不服申立でお客様の為に戦うことは障害年金を扱う社労士の真骨頂だと思う」とのお言葉をいただいたのを覚えています。

 今もその教え(勝手に教えとしております)を忘れず何とか不服申立に挑んでいます(毎度苦しい戦いばかりですが・・・)。















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